このページは、天野画廊の画廊主・天野和夫の、きわめて個人的な出来事を綴ったものです。
画廊の仕事が、一見個人的であるにもかかわらず、社会的な機能を果たしているありさまを、
おわかりいただけるかと思います。
自他ともに、プライバシーには慎重に配慮いたしますが、うっかりと逸脱している場合は、すみ
やかにお叱りのお言葉をお願い申し上げます。　　　　　　　　　　　　　　　　天野画廊　天野和夫

はや4月も6日になった。桜はちょうど今が見ごろ。昨日の雨もあがり、少々肌寒いが、これから
週末にかけて、桜の木下では宴が繰り広げられる。
おりしも、民主党の党首の選挙が明日行われる。にせメール事件がここまでの事態に発展する
とは誰にも予想がつかなかっただろう。だがここで何とかしなくては今秋の選挙の敗北は目にみ
えているし、場合によっては民主党自体が空中分解することだってありうる。政治とはこわいもの
だ。一寸先はまさしく闇。
うわさによれば、党首が小沢で、菅は幹事長におさまるらしいが、私の好きな図式ではない。でも
いまの小泉には、小沢はなかなか手ごわい相手なのだそうだ。もう20年近く前だと思うが、当時
の自民党の党首選を控えて、事前に候補者が小沢に呼び出され、面接を受けていたシーンをテ
レビで見たことがある。小沢はそれほどの実力者だったのだ。それがとうとう表舞台に出る。
小沢には、野党の党首としてのイメージがない。きわめて与党的な感じが濃い。戦国大名は、勝
つことが目的で、そのあとの施策は後回しが常。でもいいかげんに時代劇的な立ち回りは、やめ
てほしいと思う。もう少しスマートなやり方が出来ないのだろうか。現代的なセンスを、私は民主党
に期待していたのだが。
このあと、はたして民主党は、自民党に取って代わる政党になるのだろうか。しばらく見ていよう。

北朝鮮の核問題をめぐる６者協議の主要メンバーが東京にそろっていて、北朝鮮に対して、さか
んに復帰をうながしている。拉致被害者の家族は、拉致問題を抜きにした交渉に不満をあらわにし
ている。政治交渉は駆け引きだけに、取引材料になじまないものはテーブルには載らない。冷酷な
ものだ。北朝鮮が首を振らない理由はただひとつ。アメリカによる金融制裁だ。具体的には、マカオ
にある銀行の北朝鮮の口座を凍結したことにある。武器輸出やニセドル、麻薬などで稼いだ金を
洗浄するのに北朝鮮が使っていた口座だそうだ。いったいいくらほどの金が凍結されてしまった
のだろうか。また、それが北朝鮮の国家存亡に影響するほどの金額なのだろうか。最近日本の
市中銀行でも、一度に送金できる金額がかなり制限されたのは、このことと関係があるのだろう
か。
アメリカは、ぎりぎりまで締め上げれば北朝鮮が音を上げると踏んでいるようだが、果たしてその
通りになるのだろうか。強権を持ってやるからには、北朝鮮崩壊後のシナリオも描いているに違い
ないが、後始末に十分責任を持つのだろうか。中東のような混乱がこの東北アジアに起こってほ
しくない。

若い頃に知り合った作家が、結婚して赤ちゃんと一緒に画廊にくることが多くなった。それだけ私
が年をとったのだろう。私自身孫がいてもおかしくない年齢になった。そういうわけで、赤ちゃんは
好きだ。もう人見知りがはじまっている子でも、上手にあやすと笑ってくれる。はては抱っこをして
も泣かない。そうなるとよけいにかわいく思える。赤ちゃんも、自分に危害を加えそうな相手ではな
いことがわかるのだろうか。壁にかかっている作品はそっちのけで、しばし赤ちゃんが画廊の主役
になってしまう。画廊としては、ほんとうはいささか困るのだけど、まあ少しの間ならいいだろう。

ファーストフードの洋モノのチャンピオンはハンバーガー、和モノは牛丼と言うのは大方の異論の
ないところだと思うが、これに対して、スローフードという言葉もあるらしい。
注文を受けて、厨房で素材から料理する旧来のものがスローフードと思いきや、立ち食いうどん
の店で、この言葉を見つけた。京阪・寝屋川市駅ホーム内にある「比叡」がそれ。｢スローフードは
健康の源」と書いてある。はて？立ち食いうどんがスローフード？注文して30秒も経たないうちに
持ってくるのに？インスタントラーメンでも3分は待たないといけないのに．．．まあ、おそらく電子
レンジで暖めるだけの商品じゃないですよということを言いたいのだろう。図式が、ファーストフー
ド＝ジャンクフード＝健康に悪い、となっている以上、健康に良いことを看板にするには、スロー
フードというほかない。論理が逆転している。立ち食いうどんが、ファーストかスローかを100人に
問えば、90人以上はファーストフードだと答えると思う。
さて、それでは論理の誤りを犯さないで、なおかつ看板のもつアピール度をアップするには、私な
らどう書き換えよう？「ファーストフードの自然派！」はいかが？

大阪・北浜のカラスはすごい。日曜日の早朝、オフィス街の反対側にならぶ飲食店が前日に出し
た生ゴミを狙っていた。３ｍくらいに近寄っても逃げようとはしない。真っ黒の体は不気味だが、よ
くみると艶がとても美しい。だがペットの鳥を見慣れている私には、その太くてしっかりした嘴は、
危険な凶器に見えた。思わずあの有名な映画、ヒッチコックの「鳥」を思い出した。一羽でも不気
味なのだから、何千羽もいれば恐怖になるのが良くわかる。携帯のカメラをむけると逃げると思い
きや、ポリバケツのえさが気になるのか、去ろうとはしない。シャッター音にもひるまなかった。こ
の写真は3枚撮った最後の写真。じつはこのあと、携帯の動画でも撮った。黒いビニール袋をつ
つき、なかから肉片の残る骨をくちにはさんだ。実にたくましかった。