このページは、天野画廊の画廊主・天野和夫の、きわめて個人的な出来事を綴ったものです。
画廊の仕事が、一見個人的であるにもかかわらず、社会的な機能を果たしているありさまを、
おわかりいただけるかと思います。
自他ともに、プライバシーには慎重に配慮いたしますが、うっかりと逸脱している場合は、すみ
やかにお叱りのお言葉をお願い申し上げます。                天野画廊 天野和夫

画廊主
   の
独り言

2004年9月

お叱りのお言葉,ご意見など
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2004年6月分
7月分
8月分

今朝ついた宅急便は、4kg以内で北海道札幌から1180円だった。明日くる予定の宅急便は、
100サイズ大阪市内間で1160円だ。前者はゆうパック元払い、後者はヤマト着払い。料金計算
の基準も、元払い・着払いの違いもあるが、どうも解せない。中身は同じ中古ノートパソコンの
ジャンク品。このごろ趣味で分解したり組み立てたりしている。経験上、着払いでくるものは、
大きなダンボール箱に詰め物がほとんど、というのが多い。元払いで来るのは、必要十分な詰
物で箱も小さく加工したり、工夫の跡が伺えるものが多い。料金システムは業者によって違いが
あるのは仕方がない。要は利用する側の気配りだろう。そう思って、私が出品したものを、落札
者に発送するときは、ひと手間かけて、コンパクトな梱包に仕立て上げる。なんてことはない、
ふつうのことだと思うのだが、よそ様はそうではないらしい。いやな世の中ですね。

着払い宅急便の気配り

2004.09.09

展覧会をしていると、いろいろな人が見に来る。作品を買ってくれる人だけがきて、気に入った
作品がどんどん売れればいいのだが、話はそう簡単ではない。画廊廻りを楽しみに来る常連
の人たちがいる。東京ではウオッチャ−と呼ぶそうだが、単に見るだけの人と、気に入ったら買
う人がいる。ただし作品を見る目は厳しい。厳しさはコレクターと呼ばれる人たちも同様だが、
コレクターは、あらかじめ情報を収集していて、ある程度的を絞って画廊にやってくる。従って
衝動買いはあまりしない。商業画廊の格は、この種のコレクターをいかに多くひきつけること
ができるかで決まる。現代美術の画廊は、しかし、商業画廊とは趣を異にするので、また別の
基準がある。これについては、いずれまた触れる機会があると思う。
若い作家もよくやってくる。他人の作品をみることは勉強になるというまっとうな理由以外に、
知り合いの作家だから、画廊に興味があるから、自分の展覧会のPRに、と理由は千差万別
だ。こういう人たちの中に、たまに作品を買ってくれる人もいる。
評論家や美術館関係者もやってくる。最新の情報を取り入れるためだ。彼らは情報に興味が
あるので、作品を買うのはまれだ。
同業者もやってくる。同業者は、自分の画廊経営を念頭においているので、チェックポイントが
多い。これについても、また触れる機会を別に持つ。
なんやかんやで、いろいろな人が訪れるが、現代美術の画廊としては、まずその人数が多い
ほどいい評価につながるようだ。その上に、コレクターの出入り、評論家や美術館関係者の来
訪、新聞や雑誌などの報道などで、評価がつみあげられてゆく。商業画廊と違って、売れる
売れない、あるいは営業年数などは、さほど重要ではなさそうだ。

現代美術の画廊の要件

2004.09.15

8月10日付けのこの欄で紹介した北海道・札幌の友人が、今度は奥さんを連れて私の画廊に
来てくれた。前回の約束なので、夕方からゆっくり時間をかけて食事をし、ビールもしこたま飲
んだ。数日前からアレルギーが出ていて、アルコールは禁物なのだが、遠来のお客様なので
ま、いいかってわけで、行き付けの中華料理店の11時の閉店まで歓談した。画廊の仕事の上
での利害関係がないだけに、じつに楽しく飲める。
だが、あとがいけなかった。余裕をもって乗った電車は、一駅乗り過ごす。終電で引き返し、
タクシーで帰宅すると、家ではすごい形相の家内が待っていた。虫の居所が悪いのか不満た
らたらで、口論が始まった。これ以上のことは、プライバシーに触れるので、残念ながらここ
には書けません。お知りになりたい方は、画廊にお越しください。
たまたま東京から帰っていた息子の前で、夫婦喧嘩をしてしまったことが、とても後味が悪い。
それに、収まりかけていたアレルギーがまたぶり返した。
友人から札幌の美術界の様子は、しかしながら、しっかりと聞いておきました。

宴のあと

2004.09.19

以下の話は、某サイトの依頼で5月に原稿を送ったものの、一向に掲載されないので、賞味期限の
切れないうちに、この欄で紹介することにしました。
【日本で個展をするパリの画家を、アメリカ帰りの韓国人画廊主に紹介すると】
この春、複雑な体験をした。日本でよく売れているフランス人画家を連れて、ソウルで、アメリカ帰りの
韓国人女性画廊主に紹介した。今年10月に開かれるアートフェアー、MANIFに出展するに際して、こ
のアートフェアーのオーガナイザーである彼女に、出展審査を受けたのだ。
彼女は、シカゴで自分の画廊を開き、もうけた金で数年前にソウルに戻り、新しい画廊をはじめた。と
ころがアメリカで売れたものが、ソウルではぜんぜん売れない。ビジネスのやり方もぜんぜん違う。アメリカ
で稼いだ金があっという間になくなったという。以来、アメリカ流を捨て、韓国人好みの絵に専念した。
レベルを落とすことに耐えながら。
そんな人だから、韓国人の好みには敏感だ。私が連れていったフランス人の作品は、日本人好みが
反映されているので、その中のどれがソウルで受け入れられるのか、大いに興味があった。ひとつの絵
をめぐって、居ながらにして、
日米欧韓の評価基準を比較することができる、めったにないチャンスだ。
日本で受けることを狙った図柄の作品は、やはり韓国でもだめ。日本で売れるシンプルな図柄は、
韓国ではだめ。やや甘ったるいものが韓国では売れる。暗いものは韓国では絶対にだめ。赤い作品
も絶対にだめ。日本ではしゃれた図柄ならどちらもOKだ。ヨーロッパと韓国では、メリハリの利いた色彩
が好まれるが、日本では柔らかい配色が好まれる。最後に、アメリカでは何でも売れる。
アメリカでは何でも売れるというのは、面白い話だが、今回のテーマからそれるので、またの機会に書い
てみたい。ひとまずこれだけの話を、もっと整理できたら、ファッションアドバイザイーになれそうだ。そうい
えば、美術の世界で、大きな潮流がなくなって久しい。その分、従来は地域格差に基づいた縦型の
構造であったものが、いまや地域主義に基づいた横型の構造になっているのではないか。そんなことを
考えさせられた。世界はこれから面白くなりそうだ。

日米欧韓の評価基準を比較

2004.09.21

10月分

11月分

12月分
2005年