5月分
4月分
2月分
3月分
2007年1-12月分
2005年1-12月分
2004年6-12月分

2008年7月



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お叱りのお言葉,ご意見など
画廊主
   の
独り言

このページは、天野画廊の画廊主・天野和夫の、きわめて個人的な出来事を綴ったものです。
画廊の仕事が、一見個人的であるにもかかわらず、社会的な機能を果たしているありさまを、
おわかりいただけるかと思います。
自他ともに、プライバシーには慎重に配慮いたしますが、うっかりと逸脱している場合は、すみ
やかにお叱りのお言葉をお願い申し上げます。                天野画廊 天野和夫

2006年1-12月分
2008年1月分

ソウルでの展覧会を終えて、帰国した。ソウルは昨年の10月に行って以来だから、半年以上のご無沙汰だ。
到着して、すぐに気づいたのが、町中の要所要所に張り付いた機動隊の姿。25年ほど前、私が最初に韓国
を訪れたころは、学生運動が最高に盛り上がっていたころで、連日デモが頻発、催涙ガスのにおいが町中に
染み付いていた。今回のデモは、米国産の牛肉問題がきっかけだ。韓国政府が、なし崩し的に米国産牛肉
の輸入再開を決めたことが、大衆の反発を買った。おかげで、イ・ミョンパク大統領の任期は急降下。今では
日本の福田首相の人気と最下位争いを演じている。さて、そのデモだが、結構派手で、かなりの逮捕者のも
出ている。ホテルでテレビを見ていると、バスの窓枠にロープを絡めて、綱引きのようにして何度か引くうちに、
大きなバスが、実際に転倒するほどだ。展覧会を見に来てくれる友人たちも、画廊の近くの鐘路の大通りの
デモのあおりで、かなり遅れてやってきた。
長期化するといわれているこのデモだが、日本人の感覚だと、そんなに深刻なものか疑問がわく。で、韓国の
友人に聞くのだが、どうも、牛肉だけが問題ではないらしい。
韓国の大衆は、基本的には反米なのだ。だから、本当は、牛肉は口実にすぎない。それで、合点がいく。日本
人は、基本的には親米だから、牛肉問題も、大きなデモもなしにすんでしまった。抗議行動もあったが、それ
は日本政府に対するもので、直接アメリカ政府に向けられたものとは言いがたい。だが、ソウルでは、まず米
国が問題で、次に米国に甘い大統領府がヤリ玉だ。少々構図が違う。
そんな韓国だが、一方では、みんなアメリカに行きたがる。特に子を持つ親は、子供の留学先に、圧倒的にア
メリカをすすめる。次にヨーロッパ、最後に日本の順だ。好き嫌いよりも実利優先と解釈すべきなのか。でも、
サッカーの試合で、アメリカと日本が戦うと、彼らは間違いなく日本を応援する。それでは、準戦時体制の北朝
鮮と日本が戦うと、今度は全員北朝鮮を応援する。可否を決める心理的な基準がどこにあるのか、はなはだ
興味深い問題だ。

久しぶりに見た
ソウルのデモ

7月2日

6月分

ソウルでの展覧会は、陶芸作家・脇山さとみの個展。場所は有名なインサドンにある老舗のトンインギャラリー。
2年越しの依頼に答えての展覧会だ。脇山さとみの作品は、ポップな感覚だけに、果たして韓国のひとたちに受
けいれてもらえるかどうか、心配していた。15、6年前にした展覧会では、ほとんど反応がなかったから、その後
の韓国社会の変遷に期待したわけだが、果たしてその期待には十分報われた結果が出た。反応は上々で、作
品もそこそこ売れた。ギャラリーのオーナーも、想像以上の反応に、会期半ばから、急に愛想がよくなった。
韓国のやきものは、青磁や白磁などの高級品と、日本の抹茶茶碗のような素朴な味わいのある、サバルと呼ば
れる日常的な器とに2極化している。どちらにも共通するのが、重たさであり、静謐さだ。脇山さとみの作品は全
然ちがう。おそらくは、どんどん変貌している韓国の社会が、いまや普通に脇山さとみの作品を受け入れるように
なったのだろう。初めて韓国を訪れてから、25年になるが、この変貌ぶりには、驚きよりも感慨に近いものがある。
何に対しても不感症の症状を示すわが故郷・大阪は、なんとかならないものか。

ソウルでの脇山
さとみ展

7月3日

またもや竹島問題が浮上した。文部省が教科書に「日本固有の領土」と明記するということが、韓国を刺激した
らしい。この問題の根は深い。小さな島だが、漁業権が絡むだけに、ことは深刻だ。しかも韓国にとっては、第二
次大戦後の戦後処理、もっと言えば、日本からの解放を勝ち得た当然の権利と映っているのだろう。開発途上国
から、先進国の仲間入りをすでに果たした韓国が、この際、国権のおよぶ区域を確定したいという気持ちのあらわ
れなのだろう。この竹島以外に、日本は北方四島の問題をかかえている。こちらも文部省が「ロシアが不法に占拠
している」と、教科書に明記する方針だそうだから、ロシアとの摩擦が再燃している。中国との国境についても、先月
油田の共同開発で、一段落したが、領土問題には触れない協定に落ち着かせたようだから、いつまた問題が表面化
するとも限らない。四方が海に囲まれた日本、しかも敗戦後の戦後処理に絡む問題だけに、時間がかかるのはわか
るが、最近気になるのは、原油の高騰を機に、食料自給率の向上が叫ばれていて、国内農業の保護や、輸入規制
などと、この国境問題が、故意に絡められて発言されることがある。偏狭なナショナリズムだけは、御免こうむりたい。

竹島問題をめぐって

7月17日

石油の高騰が、バイオエタノールの製造に拍車をかけようとしている。そのために、穀物相場も高騰している。小麦
やとうもろこしの値上がりが顕著だ。そのせいで、パンや麺類、卵や肉類、ありとあらゆるものが値上がりする。食
パンはすでにこの春に十数パーセント値上がりした。10月の小麦価格の改定が、どれほどになるか見通しがつかな
いので、さらに値上げの可能性がある。この小麦価格、実は政府が一手に安い価格で輸入し、かなりの価格を上乗
せして、国内の業者に売り渡している。差額は国内産の小麦の保護に割り当てられているそうだが、この構図がいつ
まで続くのだろうか。上乗せ分を撤廃あるいは圧縮すれば、小麦を原料とする製品価格は、値上げの必要がなくなる。
石油もそうだ。今年はじめにいったん廃止された暫定税率が、その後の国会で与党のごり押しで復活したが、この騒
ぎで、ガソリン税が廃止されると、いくら安くなるのかが、はっきりと国民の前に示された。その後も値上げが続く石油
価格に、物価安定の観点から、今一度ガソリン税の見直しをする気配は、今の政府にまったくない。小麦にしろ、ガソリ
ンにしろ、価格操作はいとも簡単だ。政府が決める上乗せ分を撤廃すればよい。石油や穀物の高騰を目の前にして、
政府の無策ぶりには、ただただあきれかえる。この現実をほうっておいて、消費税の値上げに走れば、いよいよ国民は
与党に「政権担当能力なし」の離縁状をたたきつけることを、政府はしっかりと認識すべきだ。

無策の政府―
石油と穀物の高騰

7月22日

石油や穀物の高騰が、画廊の仕事にも、大きな変化を与えている。直接的な因果関係を証明するには難しい。ほとん
ど、「風がふけば、桶屋が儲かる」式の話だが、35年以上この仕事を続けてきて、明らかに変わってきた点がいくつか
ある。それらをつないでいくと、なんとなく絵が読み取れるのだ。
昔は営業上、車が必需品だった。引き取りや納品・査定など、こちらから出向いて行くことがほとんどだった。いまは、
近くなら自転車、遠くなら交通機関、納品には運送業者を使う。私の画廊だけがそうしているのではない。大手は別に
して、少人数でやっている画廊は、同じようにしている。商談が減ったこともあるが、こちらから出向いてゆくような営業
形態が、変化したのが原因だ。そういえば、特定の顧客には、その昔、タクシー代わりに使われたことも、思い出される。
意識はすっかり変わってしまった。
昔は事務所に、電話一本ありさえすれば、それでよかった。今ではFaxにパソコンが必需品。Faxですら、いまやメール
でほとんど事足りる。これは情報が一元化あるいは集中化し、顧客との個人的な人間関係が希薄化していることを表し
ている。もっといえば、パソコンさえあれば、画廊の仲介なしに、誰でも最新の情報を入手できる。画廊は、だから、まだ
一般に情報に載らない作家や展覧会に特化するか、一方で大掛かりな情報センター(オークションハウスなどのような)
に特化するかの道を選ぶ。ただ、駅前の不動産業者のように、どこまで行っても地域密着型の画廊は、それはそれで、
残っていく。
情報が一元化あるいは集中化することで、それを武器に、画廊抜きで画家がデビューすることが可能な時代になった。
何かにつけて話題になる村上隆と奈良美智だが、デビュー当時は別にして、いまや彼らの画業は、インターネットなしで
は維持できない。目に見えない巨大なディストリビューターにあやつられて、画廊はいまや、町のタバコ屋さん、あるいは、
その店先の自動販売機のようなものになっている。
一方貸し画廊は健在だが、これも、巨大なディストリビューターのもとで、流行や世代交代に敏感に反応しなくては、維持
がむずかしくなってきている。
この、巨大なディストリビューターは、聖書の「リヴァイアサン」を想起させる。あるいは、共産党宣言の「妖怪」かもしれな
い。正義か悪魔かの判別さえつかないが、人類の歴史の上で、新たな価値観をもたらす元締めであることは間違いなさ
そうだ。画廊は、その元締めの抵抗勢力なのか、あるいは、番頭格で、その傍らに座るのか?もしかしたら、この元締めの
足元で、踏み潰される運命なのか、あと20年もすればわかるだろう。そのとき私はたぶんいないだろうが。

巨大な
ディストリビューター

7月23日

堂島ホテルを使用した「アート大阪2008」を見た。盛況かどうかを見るのが目的で、初日と最終日2回にわたって足を運ん
だ。今年は、昨年の20数軒から、一挙に47軒に出展画廊が倍増した。この時点で来場者の収容能力の限界を超えている。
要するに、人とすれ違うのがやっとで、まともに作品が見れないのだ。もし来年もこの状態が続くなら、出展画廊から不

がでて、出店数の減少を招く恐れが十分にある。
さて、展示はどうだったか。昨年同様、ベッドやバスタブを現状のままの設定で使用しなければならない条件は、やはりき
びしい。小品がほとんどで、いきおい作品からうけるインパクトがダウンする。来場者のほとんどが若い女性層なので、そ
れでもいいといえば確かにいい。なぜなら、お目当てのものは決まっていて、ほとんど、それらを探しにくるお客様のようだ
から。ここでゆっくり作家との出会いを求める余裕など、必要ないのだ。だから、台湾からの出展画廊は、圧倒的に不利。
部屋によって、客の入りにかなりのバラツキがある。
いづれにせよ、ここでの商談はかなり難しそうだ。だとすると、遠来組にはかなりのハンディだ。得をするのは地元組。知り
合いの老舗の主人が言った。「ここでは期待していないんです。でも反響がすごいから、あとでいろいろお話をいただける
んです。」 そのとおりで、あとで自分の画廊でゆっくり商談をすればよい。もし遠来組にも配慮をするとしたら、具体的には
商談専用ルームをおけばいい。出展画廊が倍増するのはいいが、そういう配慮が後手になるのはいただけない。
いずれにしても、シティホテルの既存の空間を使うやり方では、やはり20数件が適当な規模だろう。さて、見た感想は、ここ
まで。では私が出展するかといえばどうか。答えはノー。もう少し落ち着いた雰囲気がほしい。これではまるで屋台村だ。

 

アート大阪2008を見た

7月28日

いよいよ福田首相が内閣改造に着手する。問題山積の今、内閣改造を断行しなければならない理由は、何もない。その点
では、公明党の主張に分がある。だがその公明党が、しぶしぶ改造に同意したのを受けて、福田首相も決断したようだ。首
相の究極の権限は、内閣の人事権と国会の解散権だ。その権限を行使できるかどうかで、首相のリーダーシップがはから
れる側面も、たしかにある。だがその結果、下手をすれば逆に、内閣の弱体化を招くこともある。いわば、これは両刃の剣だ。
内閣改造が、自身の政権強化のためだけにあるとすれば、内憂・外憂をかえりみない蛮行だと非難される。今回の改造は、
そんなにおいがする。後世の歴史書に、「福田内閣改造をもって、自民党政権は崩壊しました。」と記されることを期待する。

いよいよ内閣改造

7月31日

8月分