2008年1月分
2006年1-12月分

このページは、天野画廊の画廊主・天野和夫の、きわめて個人的な出来事を綴ったものです。
画廊の仕事が、一見個人的であるにもかかわらず、社会的な機能を果たしているありさまを、
おわかりいただけるかと思います。
自他ともに、プライバシーには慎重に配慮いたしますが、うっかりと逸脱している場合は、すみ
やかにお叱りのお言葉をお願い申し上げます。                天野画廊 天野和夫

画廊主
   の
独り言
お叱りのお言葉,ご意見など
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2008年3月

2004年6-12月分
2005年1-12月分
2007年1-12月分

大阪・アート・カレイドスコープのオープニングに顔を出した。今年も北川フラムのプロデュースによる
展覧会だった。昨年よりも小ぶりの展覧会だという感じがした。ちょうど1年前にも、この欄で私は、こ
の展覧会のことを書いた。サブタイトルの英語が誤訳だったことと、府知事が列席しなかったことの不
満を書いた。今年のサブタイトル「大阪時間」は、英訳してもOsaka Timeしか考えられないので、誤訳
のしようがない。だが、大阪らしさ=大阪の独自性につながるこの表現に、本当にふさわしい展示内
容かどうかは、日を改めて書き留める。ここで、ぜひとも強調したいのは、やはり知事の列席だ。橋下
新知事は、府の直轄事業を、今総点検している。文化芸術に何の関心も示さなかった前知事は、蚊
帳の外でよかったかもしれない。だが、府の文化事業の目玉であるこの展覧会を、知事に見せる絶
好の機会を、府の役人は自らふたをしてしまった。この失敗は大きな結果を招くに違いない。昨年同
様、役人ペースのこのイベントに失望した。

カレイドスコープ2008
のオープニングで

3月1日

もう10年以上昔のこと。業界の先輩で、還暦を迎えたら即引退すると言明していた人がいた。当時は
ただ、他人事で聞いていた。だが昨年、還暦を迎えた私は、今頃になって、この話を思い出し、先輩の
勇気に、ただただ敬服している。あたりまえのことだが、人生には限りがある。そして、その年代にふさ
わしい生き方がある。それを、自分の問題として、わきまえるのは、勇気のいることだ。
先日、旧知の友だちの連れあいの転職話に、つきあう羽目になった。人生に転職話はよくあることだが、
私自身にとっては、すっかり過去のことなので、たいしたアドバイスはできっこない。友だちと、その連れ
あいの、激論をよそに、果たしてわたしの過去はどうだったのかを、思い出そうとした。
私が自分の画廊をオープンさせたのは、32の年だった。自ら好んで独立したわけではなかったが、そう
せざるを得ない状況になって、やむなく自分の画廊をもった。不安はあったが、怖いもの知らずの年頃だ。
10年を経った頃、猛烈な倦怠感に襲われ、廃業・転職を真剣に考えたことがある。だが、40を過ぎたら、
求人が極端に減る。これといった資格やキャリアを持たないと、ほぼ望みはない。幸いにも、私を勇気付
けてくれた友人のおかげで、何とか今日を迎えたが、果たして、この友達の連れあいの場合はどうか。
当時の私と違うのは、現在も会社づとめで、転職先も会社を考えていることだ。40という年齢は、はなは
だ中途半端を免れない。営業マンとして横滑りはむずかしいし、かといって管理職には経験不足。ただ、
転職で再出発をめざす気持ちだけは良くわかるので、私としては、励ます以外にない。他人の人生の岐路
に、どういうアドバイスができるのか、私も勉強不足を感じている。

人生の岐路

3月4日

韓国KBS制作の連続テレビドラマ「風の息子」を見た。今、人気絶頂のイ・ビョンホンが、シリアスな3枚目
を演じている。朝鮮戦争をはさんで、激動期の韓国の政界を背景にした不条理な人間関係を描いている
だけに、ドラマ自体に説得力があり、見る人をひきつける。Yahooの動画サービスで、全20話。いまなら
一気に見ることができる。
ドラマを見ながら、どこか懐かしさを感じたので、私の青春時代にさかのぼったら合点がいった。当時の日
活のマイトガイ・小林旭のイメージが、イ・ビョンホンと重なっている。45年の歳月が瞬時に短絡するのは、
一種の快楽でもある。

イ・ビョンホン

3月7日

WBC世界フライ級王者の内藤大助と前王者ポンサクレック・ウォンジョンカム(タイ)の試合を見た。前王者
は、さすがに歴戦のつわもので、構え方もオーソドックスなスタイル。一方内藤は、オープン気味で、足をつ
かって前王者のパンチの射程を避ける様子がありありと見えた。初めてみる人には、チャンピオンと挑戦者
が逆のように思えただろう。結果的には、引き分けて王座を死守した。派手な見せ場は無かったが、どうい
うわけか、最後まで画面から離れることが出来なかった。ラウンドを重ねるごとに、内藤の気力が増すのが
伝わってきたからだ。それは、反則のない、綺麗な試合運びにも顕われていた。力では前王者が勝ってい
たかもしれない。しかし、内藤は気力で十分カバーした。だから試合後はすがすがしい気分に浸ることがで
きた。内藤は、これで妻と子供とのアパート生活を終え、持ち家を購入する考えだという。素直に拍手を贈
りたい。

内藤の防衛戦を見た

3月9日

2月分

2日前から急に春の陽気になった。その陽気につられて、今開催中の「大阪カレイドスコープ」を、昨日見に
いった。この展覧会は、大阪の文化復権をめざして、大阪府の文化課の総力をあげての企画展だ。昨年
に引き続き、総合プロデュースは、有名な北川フラム氏。
市内に点在する古い建築物に現代美術をアレンジすることによって、大阪の新たなエネルギーを引き出す
狙いがこめられている。徒歩で見て回ると1日仕事。自転車で回ると3時間コース。案内書のおすすめコー
スにしたがって、北浜の証券取引所からスタート、現代美術センターでコースを終えた。
民間のビルや家屋に作品を配置する関係で、種々の制約があるうえに、スポンサーシップのレベルもさまざ
まなので、作品の見栄えもずいぶん違う。たとえば、ガスビルの南東の窓のコーナーを拝借して、立体作品
とドローイングを組み合わせた瓜生昭太の作品は、なんとなくビルに遠慮している感じがする。そのすぐ近く
の北野家住宅の2階を使って、たくさんの古い生活道具を天井からつるした作品は、空間の中に作品が溶
け込んで、実に説得力がある。
昨年は「大大阪にあいたい」というテーマで、かつて東京と拮抗した大阪へのノスタルジー丸出しの展覧会で
それなりの主催者の意気込みが伝わったが、残念ながら、今年はかなり小ぶりな感じがした。きっと予算の
制約があるのだろう。そんな中で、健在振りを示したのが、現代美術センターの三島喜美代の作品だ。うず高
く積もった新聞紙の迷路は、繁栄の反映なのだろう。古紙として出番を待ち続けているのか、あるいは化石に
なってしまったのか、やきものを素材としているだけに、そのスケールと重量感に圧倒される。
今大阪府は、橋下新知事が、財政支出に大なたを振っている。この展覧会も今年限りになるかもしれない。

大阪カレイドスコープ

3月13日

8月分