ベリーマキコの絵には郷愁が漂っている。
時にそれは、遠近法を大きく逸脱する。
いや逸脱というよりは、初めからないのかもしれない。
同様に、大きなものと小さなものの区別もあいまいだ。

しかしそれは、見たとき感じたときの印象のままがなせ
る技でもある。

道は大きく曲がり、遠くに消失する。反対側からこちらに湾曲
する道と、実は彼方でつながっている。そして、それらに囲ま
れた大地に、日常の様々な出来事が描き込まれる。

寄り添う恋人たちであったり、しばしの休息を求める人々で
あったり、一緒に働く人たちであったり。

安らいだ世界がそこにある。

色彩は、しかし、明るくはない。安らいだ世界を描くのに不似
合いなほどに沈んだ色を、彼女は多用する。登場する人々も
じっとして動かない。着彩されずに、輪郭だけで背景の中に
溶け込んでいる人々も多い。それらを負の要素とするなら、
大きく描かれて彩色されたアイテムの数々を正の要素としよう
。総体として、正負のボリュームは互角だ。

一見して幸せを感じる彼女の作品は、子細に見るにつれ、
はっとさせられることがある。はかなさや動揺、不安の断片が、
画面の中で別の世界を形作っている。二重の世界が一つの
画面として描かれているのだ。静止した二重の世界が、そこ
でドラマを織りなす。

幸せで堂々とした長調の歌が、いつしかドラマチックな短調の
歌に変化する。

ふくらむ 2018   14x18cms

華 2018   14x18cms

あそび 2018   18x14cms

風景 2018   19x27.5cms

応援 2018   61.5xx91cms

回転寿司 1999   113.5x53cms

女の休息 2014   21x43cms

野の花 2018  18x18cms

根 2018   18x14cms

むらさき 2018   27x22cms

子ども 2002   40.5x18cms

紫花が散るのに 2005   40.5x18cms

眺め 2018   90x60cms

ブーケ 2018   233x91cms

丘に 2019   20x61cms

名前のない山 2003   45.5x61cms

花ガ咲クコト 2017   182x91cms

迷宮への入り口 2015   45x49.5cms

エスカレーターの日々 1999   181x71cms